ファクタリングは、通常の売掛金回収とは異なるタイミングで仕訳を計上する必要があり、初めて経理処理をする際に戸惑いやすいポイントです。本記事では、ファクタリングの仕訳方法や使う勘定科目から、2社間・3社間・保証型など契約パターン別の具体的な仕訳例、会計処理で注意すべきポイントまで、実務に沿ってわかりやすく解説します。
ファクタリングの仕訳が「難しい」と感じる理由
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、支払期日より前に現金化する資金調達サービスです。会計処理が複雑なイメージを持たれがちですが、通常の売掛金回収の仕訳に、売掛債権の「売却」という取引が一つ加わるだけで、それほど特別な処理は必要ありません。通常の売掛金回収では、商品やサービスを納品して売掛金が発生し、支払期日に売掛先から入金があった時点で仕訳を行うだけで完結します。ファクタリングではこの流れに「売却」という取引が挟まるため、契約締結時と入金時の2段階で仕訳を意識する必要があります。ファクタリングには、資金調達を目的とした「買取型」と、貸し倒れリスクに備える「保証型」の2種類があり、どちらを利用しているかによって仕訳のタイミングや使用する勘定科目が変わる点をまず押さえておきましょう。
ファクタリングの勘定科目一覧
ファクタリングの仕訳では、通常の売掛金回収とは異なる勘定科目を使用します。まずは代表的な6つの勘定科目を一覧で確認しましょう。
| 勘定科目 | 内容 |
|---|---|
| 売掛金 | 商品・サービスの掛取引で発生する債権 |
| 未収入金(未収金) | 売掛金をファクタリング会社に譲渡した後、入金前に一時的に計上する債権 |
| 売上債権売却損 | 買取型ファクタリングの手数料(債権譲渡による損失) |
| 支払手数料 | 保証型ファクタリングで支払う保証料 |
| 貸倒損失 | 売掛金が回収不能になった際の損失(保証型) |
| 雑収入 | 保証型ファクタリングで保証金を受け取った際の収入 |
売掛金・未収入金
売掛金は、掛取引によって発生した「代金を受け取る権利」を表す勘定科目です。ファクタリング契約を締結すると、この売掛金をファクタリング会社に譲渡することになるため、実際に入金されるまでの間は「未収入金」として一時的に管理します。未収入金は、本業の営業取引以外で生じた未回収の代金を扱う科目で、ファクタリング会社からの入金が確認できた時点で消し込みます。
売上債権売却損・支払手数料
買取型ファクタリングで発生する手数料は、一般的に「売上債権売却損」という勘定科目で処理します。一方、保証型ファクタリングで支払う保証料は「支払手数料」として仕訳するのが一般的です。会計ソフトに該当科目が用意されていない場合は、新たに登録するか近い性質の科目で代用しますが、その扱いは後ほど改めて解説します。
貸倒損失・雑収入
保証型ファクタリングを利用していて、売掛先の倒産などにより売掛金が回収不能になった場合は「貸倒損失」を計上します。その後、契約に基づいてファクタリング会社から保証金を受け取った際には、本業以外の収入として「雑収入」で仕訳します。
【買取型】2社間ファクタリングの仕訳をパターン別に解説
買取型の2社間ファクタリングは、契約日と入金日が「同日」か「別日」かによって仕訳の流れが変わります。ここでは、売掛金300万円、手数料15万円のケースで確認していきましょう。
契約日と入金日が同日のケース
契約と同時に入金されるケースでは、契約時と入金時の仕訳をまとめて処理できます。売掛金を消し込みながら、現金預金と手数料分の売上債権売却損を同時に計上します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金預金 285万円 売上債権売却損 15万円 |
売掛金 300万円 |
その後、売掛先から本来の支払期日に代金が振り込まれた際は、いったん「預り金」として処理し、ファクタリング会社へ送金した時点で預り金を取り崩します。
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| 売掛先からの入金時 | 現金預金 300万円 | 預り金 300万円 |
| ファクタリング会社への送金時 | 預り金 300万円 | 現金預金 300万円 |
契約日と入金日が異なるケース
契約締結から入金までにタイムラグがある場合は、いったん売掛金を「未収入金」に振り替えたうえで、入金時にあらためて手数料を計上します。
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| 契約締結時 | 未収入金 300万円 | 売掛金 300万円 |
| 入金時 | 現金預金 285万円 売上債権売却損 15万円 |
未収入金 300万円 |
【買取型】3社間ファクタリングの仕訳の特徴
3社間ファクタリングは、利用会社・売掛先・ファクタリング会社の3者が契約に関わる方式です。売掛先がファクタリングの利用を承諾したうえで、直接ファクタリング会社に代金を支払うため、2社間のような預り金の仕訳が発生しません。契約締結時には2社間と同様に「未収入金/売掛金」で処理し、ファクタリング会社への入金時の仕訳のみで完結する点が大きな違いです。2社間と3社間の違いを仕訳の観点で整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 売掛先への通知 | 不要 | 必要(承諾を得る) |
| 預り金の仕訳 | 発生する | 発生しない |
| 入金までのスピード | 最短即日 | 数日程度 |
| 手数料相場 | 8〜18%程度 | 2〜9%程度 |
売掛先の関与がない2社間は自社の事務負担が増える分だけ手数料が高く、売掛先を巻き込む3社間は与信の裏付けが得られる分だけ手数料が低くなる傾向があります。
実際の仕訳例も確認しておきましょう。売掛金300万円、手数料5%(15万円)のケースです。
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| 契約締結時 | 未収入金 300万円 | 売掛金 300万円 |
| ファクタリング会社からの入金時 | 現金預金 285万円 売上債権売却損 15万円 |
未収入金 300万円 |
2社間のケースと異なり、売掛先からの入金や送金の仕訳が発生しない点が特徴です。
保証型ファクタリングの仕訳
続いて、貸し倒れリスクに備える保証型ファクタリングの仕訳方法を見ていきましょう。
代金が支払われた場合
保証型ファクタリングは、契約を締結しただけの段階では仕訳を行いません。売掛先から通常どおり代金が支払われたときに、ファクタリング会社へ支払う保証料のみを「支払手数料」として仕訳します。売掛金100万円、保証料3%(3万円)のケースで確認しましょう。
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| 売掛先からの入金時 | 現金預金 100万円 | 売掛金 100万円 |
| 保証料の支払時 | 支払手数料 3万円 | 現金預金 3万円 |
代金が回収できなかった場合
売掛先の倒産などにより代金が回収できず貸し倒れが確定した場合は、「貸倒損失」を計上して売掛金を消し込みます。その後、契約に基づいて保証金を受け取った際には「雑収入」として仕訳します。売掛金100万円が回収不能となり、同額の保証金を受け取ったケースで確認しましょう。
| 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|
| 回収不能が確定した時 | 貸倒損失 100万円 | 売掛金 100万円 |
| 保証金を受け取った時 | 現金預金 100万円 | 雑収入 100万円 |
会計処理で失敗しないための3つの注意点
ここでは、ファクタリングの会計処理で注意しておきたい3つのポイントを紹介します。
勘定科目は用途に応じて統一する
ファクタリングの手数料を処理する科目に法律上の決まりはなく、「売上債権売却損」のほか「支払手数料」「雑損失」で代用するケースもあります。ただし、勘定科目は決算書に残る記録であり、契約のたびに使う科目を変えてしまうと、月次・年次の推移を確認したときに数値の変動理由が分かりにくくなってしまいます。どの科目を使うかは税理士と相談したうえで一度ルールを決め、以降は継続して同じ科目で処理することが大切です。
消費税は非課税
ファクタリングは法律上「金銭債権の譲渡」として扱われるため、取引金額や手数料に消費税は課税されません。ただし、ファクタリング会社が債権譲渡登記を行う場合、登録免許税そのものは非課税ですが、手続きを依頼する司法書士への報酬部分には消費税がかかる点に注意しましょう。手数料に消費税を上乗せして請求してくる業者もいるため、見積もり内容は事前によく確認することをおすすめします。
決算期をまたぐ場合は税金の支払いに注意
ファクタリング契約から入金までの間に決算期をまたぐと、期末時点ではまだ代金を受け取っていない状態が生じます。しかし、税金の計算は入金の有無ではなく、その事業年度に計上した売上の金額をもとに行われる仕組みです。そのため、ファクタリング会社からの入金前であっても、売上計上分に対応する法人税・消費税の納付資金は別途手当てしておく必要があります。決算期をまたぐタイミングでファクタリングを検討している場合は、この点もあわせて資金繰り計画に組み込んでおきましょう。
仕訳に迷ったときの相談先
自己判断で仕訳を進めるのが不安な場合は、顧問税理士のほか、税務署の個人課税部門(記帳指導担当)や、近くの商工会議所・商工会でも記帳や簿記に関する相談を無料で受け付けています。税務署では記帳の説明会が開かれていることもあり、初めて自分で経理処理をする経営者や個人事業主にとっても利用しやすい窓口です。ファクタリングの利用頻度が高い場合は、早めに専門家へ相談してルールを統一しておくと安心です。
ファクタリングの仕訳に関するよくある質問
Q1:ファクタリングの仕訳はどの勘定科目を使えばよいですか?
A1:契約締結時は「未収入金」、入金時の手数料は「売上債権売却損」(保証型は「支払手数料」)を使うのが一般的です。ただし会計ソフトや税理士の方針によって扱いが異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
Q2:ファクタリングの手数料に消費税はかかりますか?
A2:かかりません。ファクタリングは金銭債権の譲渡にあたるため非課税取引です。ただし債権譲渡登記の司法書士報酬には消費税がかかります。
Q3:2社間と3社間で仕訳方法は変わりますか?
A3:契約締結時の仕訳は同じですが、2社間は売掛先からの入金を一時的に「預り金」で処理する点が異なります。
Q4:ファクタリングの手数料はどのくらいですか?
A4:2社間ファクタリングは8〜18%程度、3社間ファクタリングは2〜9%程度が相場とされています。ファクタリング会社によっても差があるため、複数社で見積もりを比較して決めるとよいでしょう。
まとめ
ファクタリングの仕訳は、売掛金を「未収入金」に振り替える処理が加わる点が最大のポイントです。買取型か保証型か、契約日と入金日が同日か別日か、2社間か3社間かによって、使用する勘定科目や仕訳のタイミングが変わります。自社の契約内容を正確に把握したうえで、迷ったときは税理士などの専門家に相談しながら、正確な会計処理を心がけましょう。

