期日現金とは?仕組み・メリットデメリットと対処法を徹底解説

取引先から「期日現金でお願いしたい」と言われ、資金繰りへの影響が不安な方も多いのではないでしょうか。期日現金とは、売掛金の支払期日を通常より後ろ倒しにする決済方法で、受取側には資金がなかなか入らないリスクがあります。本記事では期日現金の仕組みやメリット・デメリット、下請法との関係、対処法までわかりやすく解説します。

目次

期日現金とは

期日現金とは、売掛金の支払いにおいて、あらかじめ決められた期日に代金を現金(銀行振込)で支払う決済方法です。通常の掛け取引よりも支払期日を後ろ倒しにし、締め日から60日、90日、120日など、一般的な支払いサイトより長い期間を設定する取引を指します。

掛け取引の支払サイトは、月末で締めて翌月末までに支払う30日程度のものや、翌々月末まで待って支払う60日程度のものが一般的です。これに対して期日現金は、企業間の口約束によって支払期日をさらに先へ延ばす決済方法といえます。手形を発行しない請求書ベースの後払いであるため、比較的手軽に導入できる点が特徴です。なお、一般企業の間では「延現金」と呼ばれることもあります。

期日現金の2つの特徴

期日現金には、実務上見過ごせない特徴が2つあります。

ひとつは、入金までの拘束期間が通常の掛け取引よりも長くなることです。たとえば60日サイトで取引していた相手が期日現金に切り替えると、経理担当者は請求書を発行してから実際に資金が口座へ着地するまでの間、これまで以上に長く「まだ入っていないお金」を資金繰り表の中で抱え続けることになります。

もうひとつは、支払企業の社内において支払いの優先順位が手形より低く扱われがちなことです。手形は決済日に落とせなければ不渡りとなり、半年以内に二度目の不渡りを出せば銀行取引停止処分という事実上の倒産に直結するため、企業は他の支払いを後回しにしてでも手形決済を優先します。一方の期日現金は口約束による後払いに過ぎず、遅れても不渡りのような制裁を受けません。そのため資金繰りが苦しい支払企業ほど後回しにされやすく、指定された期日に必ず入金される保証はないと考えておく必要があります。

期日現金の具体例

たとえば、4月分の取引をまとめて締め、通常なら5月末に振込されるところを、期日現金では「7月末に振込する」といった形で期日が指定されます。締め日から数えて90日サイト、120日サイトといった長い支払期日が設定されるケースも珍しくありません。請求書を発行し、口頭または契約書上で支払期日を後ろ倒しにする合意さえ取れれば成立するため、取引先にとっては導入のハードルが低い決済方法といえます。

期日現金と他の決済方法との違い

売掛金の決済方法にはいくつか種類があります。ここでは、期日現金と振込・手形決済・でんさいとの違いを整理します。

振込との違い

振込とは、銀行口座へ資金を移動させる送金手段で、手続きをすればすぐに対象口座へ送金されます。期日現金でも最終的な決済手段として振込が使われますが、送金のタイミングがあらかじめ指定された期日に固定されている点が通常の振込と異なります。期日現金は、振込の実行時期を後ろ倒しにして支払いサイトを長くする方法と言い換えられます。

手形決済との違い

手形決済は、指定した期日に支払いを行うことを約束した有価証券によるやり取りです。期日現金も手形決済も期日まで支払いが行われない点は共通していますが、大きな違いは有価証券の有無にあります。

手形は証書自体に金銭的価値があるため、手形割引や裏書譲渡によって支払期日前に現金化できます。一方、期日現金は口約束による後払いにすぎないため、期日前の換金手段がありません。また手形決済では、支払企業が印紙税や発行手数料、記名・印紙貼付などの事務作業を負担し、受取企業も銀行への取立て依頼が必要です。期日現金であれば、こうした手形特有のコストや事務負担がかからないというメリットもあります。

でんさいとの違い

でんさいとは、でんさいネット上で管理される電子記録債権のことで、手形に代わる決済手段として利用が広がっています。でんさいは期日前の換金や分割譲渡が可能な点で手形に近い性質を持ちますが、支払側・受取側の双方がでんさいネットへの利用登録を済ませていなければ利用できず、決済や譲渡のたびに手数料が発生します。期日現金は請求書を発行するだけで取引できる手軽さがある一方、でんさいのような期日前の換金機能は備えていません。

決済方法 期日前の換金 特徴
期日現金 不可 口約束のみで請求書発行のみで成立し手軽
手形決済 手形割引等で可 不渡りによる強い支払強制力がある
でんさい 双方の利用登録が必要で手数料が発生

期日現金のメリット

期日現金は支払期日を後ろ倒しにする取引であるため、恩恵を受けるのは主に支払企業側です。

支払企業側のメリット

支払企業にとっての最大のメリットは、手元に資金を長く残せることによる資金繰りの改善です。支払いサイトが延びる分だけ支払代金を準備する時間的余裕が生まれ、資金計画を立てやすくなります。

また、取引先の承諾さえ得られれば成立するため、約束手形の発行が不要になり、印紙税や発行手数料といった手形決済特有のコストを削減できるのも大きな利点です。手形の記名や郵送といった事務手続きの負担がなくなる点もメリットといえます。

受取企業側のメリット

受取企業にとって期日現金そのものに直接的なメリットは多くありませんが、手形決済から期日現金へ移行した場合には、銀行への取立て依頼といった事務手続きが不要になる点は評価できます。また、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が適用される取引であれば、一方的に不利な支払条件を押し付けられることはありません。

期日現金のデメリット・注意点

期日現金は支払企業に有利な取引である反面、受取企業には注意すべき点が多くあります。

支払企業側のデメリット

手形取引の件数がもともと少ない場合、期日現金へ切り替えてもコスト削減効果を感じにくい点がデメリットです。また、これまで別の決済方法を使っていた企業にとっては、期日現金特有の事務手続きに慣れるまで時間がかかることもあります。

受取企業側のデメリット

受取企業にとって最大のデメリットは、手形のように期日前に資金化する手段がなく、売掛金が現金化されるまでの期間が長引くことです。期日が先延ばしになっている間に売掛先が倒産すれば、その売掛債権は回収不能な不良債権となってしまいます。

手形のような支払いへの強制力もないため、期日に確実に入金される保証もありません。取引相手との信頼関係や与信状況を十分に確認したうえで、期日現金による取引に応じるかどうかを判断する必要があります。

期日現金と下請代金支払遅延等防止法の関係

期日現金はどのような取引にも自由に適用できるわけではありません。資本金3億円超の親事業者と資本金3億円以下の下請事業者との取引、あるいは資本金1,000万円超3億円以下の親事業者と資本金1,000万円以下の下請事業者との取引には、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が適用されます。

下請法は、立場の弱い下請事業者が親事業者から不当な負担を強いられないよう保護するための法律で、商品やサービスの提供を受けてから60日以内に代金を支払わなければならないと定めています。手形の交付から満期までの期間についても、かつては繊維業90日以内・その他業種120日以内の猶予が手形通達で認められていましたが、2024年11月の通達改正により、現在は業種を問わず60日以内に短縮されています。期日現金についても同様に、60日を超える支払いサイトの設定は下請法違反となる点に注意が必要です。なお経済産業省は、紙の約束手形自体についても2026年度末を目途に実質廃止し、でんさいや振込への移行を促す方針を打ち出しており、期日現金や電子的な決済手段への移行は今後さらに進むと見込まれます。

自社が下請法の対象となる取引に該当するかどうかは、事前に必ず確認しておきましょう。取引基本契約書や発注書に記載された資本金要件や支払条件を見直し、該当する場合は60日を超える期日現金を提案されても応じる義務がないことを理解しておくことが、下請事業者を守るうえで重要です。

期日現金を持ちかけられたときの判断基準

取引先から期日現金による支払いを打診されたものの、断りにくいと感じるケースは少なくありません。しかし、安易に受け入れてしまうと資金繰りが悪化する恐れがあるため、次のような基準で慎重に判断することが大切です。

資金繰りに支障が出ないか確認する

期日現金を受け入れる前に、支払期日までの間、経営が回る程度の資金を手元に残せるかどうかを必ず確認してください。売上代金の入金が遅れても、仕入代金や経費、税金などの支払いは通常どおり発生します。利益が出ているにもかかわらず手元資金が不足して支払いができなくなる「黒字倒産」に陥らないよう、資金繰り表などで資金の流れを把握しておくことが重要です。

支払いサイトの短縮交渉をする

不安がある場合は、期日現金そのものを断るのではなく、支払いサイトを少しでも短縮できないか交渉してみるのも有効な方法です。今すぐの短縮が難しくても、将来的な見直しを打診しておくことで、一方的に負担が偏る事態を避けやすくなります。

受注とのバランスを考える

期日現金の取引をすべて断ってしまうと、受注数や仕事量が減ってしまう可能性もあります。資金繰りに支障が出ない範囲であれば、支払条件よりも受注のメリットを優先すべき場面もあるでしょう。下請法に抵触する取引でないかを確認したうえで、総合的に受けるかどうかを判断してください。

  • 経営が回る程度に資金が手元に残っているか
  • 支払いサイトの短縮交渉ができそうか
  • 支払条件より受注を優先するべきか
  • 下請代金支払遅延等防止法に抵触しないか

期日現金のリスクに備えるファクタリングの活用

期日現金による支払いが増えると、受取企業は代金の回収に時間がかかり、資金がショートするリスクを抱えることになります。こうしたリスクへの備えとして有効なのが、売掛債権を期日前に現金化できる「ファクタリング」の活用です。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、支払期日より前に資金化する金融サービスです。借入ではなく債権の売買契約であるため負債が増えず、売掛先が万一倒産しても回収不能のリスクを負わずに済む点が特徴です。期日現金によって支払期日が後ろ倒しになっている場合でも、ファクタリングを利用すれば早期に資金を確保できます。

2者間ファクタリングと3者間ファクタリング

ファクタリングには、売掛先企業の承諾を得ずに契約する「2者間ファクタリング」と、売掛先企業の承諾を得て契約する「3者間ファクタリング」があります。

2者間ファクタリングは売掛先に知られずスピーディーに資金調達できる一方、手数料はおおむね8〜18%程度とやや高めです。3者間ファクタリングは売掛先の承諾が必要な分、手数料は2〜9%程度に抑えられます。手数料を重視するなら3者間、スピードや秘匿性を重視するなら2者間を選ぶとよいでしょう。

種類 売掛先の承諾 手数料の目安
2者間ファクタリング 不要 8〜18%程度
3者間ファクタリング 必要 2〜9%程度

ファクタリング会社を選ぶポイント

ファクタリングを利用する際は、悪徳業者を避けることが何より重要です。手数料が著しく高い、会社所在地や連絡先が不明瞭、償還請求権ありきの契約を迫るといった業者には注意しましょう。手数料の相場感を把握したうえで、入金スピードや償還請求権の有無、実績や情報開示の丁寧さなどを比較し、信頼できるファクタリング会社を選ぶことが、期日現金によるリスクを乗り越える近道です。

よくある質問(FAQ)

Q. 期日現金と手形はどちらが有利ですか?
A. 支払企業にとっては、印紙税や発行手数料がかからない期日現金の方がコスト面で有利です。一方、受取企業にとっては、期日前に現金化できる手形の方が資金繰り面で安心といえます。

Q. 期日現金を断ることはできますか?
A. 法律上、期日現金の受け入れを強制されることはありません。資金繰りへの影響や受注とのバランスを踏まえ、必要であれば支払いサイトの短縮交渉や取引の見直しを検討しましょう。

Q. 期日現金の売掛金もファクタリングで現金化できますか?
A. 可能です。期日現金による売掛金も通常の売掛債権と中身は同じであるため、ファクタリングを利用すれば支払期日を待たずに資金化できます。

Q. 期日現金と延現金は同じものですか?
A. 基本的に同じ決済方法を指す言葉です。企業によって呼び方が異なるだけで、支払期日を後ろ倒しにする仕組みそのものに違いはありません。

まとめ

期日現金は、売掛金の支払期日を通常よりも後ろ倒しにする決済方法で、支払企業にとっては資金繰りの改善や手形コストの削減といったメリットがあります。一方、受取企業にとっては入金までの期間が長引き、資金ショートや貸し倒れのリスクを抱えやすい取引です。

下請代金支払遅延等防止法が適用される取引では60日を超える期日現金は認められないため、対象となる取引かどうかを事前に確認しておく必要があります。取引先から期日現金を持ちかけられた際は、資金繰りへの影響や受注とのバランスを踏まえて慎重に判断し、不安があれば支払いサイトの短縮交渉やファクタリングの活用でリスクに備えましょう。

期日現金は今後も企業間取引の中で選択肢のひとつとして提案される場面が増えていくと考えられます。仕組みとリスクを正しく理解し、必要に応じて信頼できるファクタリング会社を選んでおくことで、資金繰りの不安を抱えずに取引を継続できるようになります。

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