できるだけ手数料を抑えてファクタリングを利用したいと考えたとき、「3社間ファクタリング」という選択肢を目にした方も多いのではないでしょうか。3社間ファクタリングは、売掛先の承諾を得る手間はかかるものの、2社間ファクタリングよりも低いコストで資金調達できる仕組みです。本記事では、3社間ファクタリングの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、利用が向いているケース、会社の選び方まで、実務に役立つポイントを徹底解説します。
3社間ファクタリングとは?基本の仕組み
3社間ファクタリングとは、自社が保有する売掛金を、ファクタリング会社に買い取ってもらい、支払期日には売掛先が直接ファクタリング会社へ代金を支払う資金調達方法です。資金を必要とする自社、その売掛金を買い取るファクタリング会社、支払い義務を負う売掛先という三者が、一つの契約の中でそれぞれの役割を分担する仕組みになっています。もともとファクタリングは、この3社間の契約形態が基本形であり、売掛先を交えずに完結する2社間ファクタリングは、そこから派生した簡易的な契約形式にあたります。
3社間ファクタリングでは、利用者がファクタリング会社に売掛金を売却する際、売掛先に対してファクタリングを利用する旨を通知し、承諾を得る必要があります。承諾が得られると、売掛金の支払期日には、売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われる仕組みになります。
2社間ファクタリングとの違い
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社だけで契約が完結し、売掛先への通知や承諾が不要です。そのため資金調達のスピードは速いものの、ファクタリング会社が売掛先の状況を直接確認できないリスクを負う分、手数料は高めに設定されます。
一方の3社間ファクタリングは、売掛先を契約に加えることで、ファクタリング会社が売掛金の存在や支払い能力を直接確認できます。ファクタリング会社にとってのリスクが下がる分、手数料を低く抑えられる点が最大の特徴です。
| 3社間ファクタリング | 2社間ファクタリング | |
|---|---|---|
| 契約の当事者 | 利用者・ファクタリング会社・売掛先 | 利用者・ファクタリング会社 |
| 売掛先への通知・承諾 | 必要 | 不要 |
| 手数料の相場 | 低め | やや高め |
| 資金調達までのスピード | 数日〜数週間 | 最短即日 |
| 売掛金の回収 | 売掛先がファクタリング会社へ直接支払う | 利用者が回収してファクタリング会社へ引き渡す |
申込みから入金までの流れ

3社間ファクタリングを利用する際の基本的な流れは、次のとおりです。
- ファクタリング会社へ申込み、必要書類(請求書・通帳の写しなど)を提出する
- 売掛先の信用力を含めた審査が行われる
- 売掛先へファクタリング利用の通知を行い、承諾を得る
- 契約を締結し、手数料を差し引いた金額が利用者の口座へ入金される
- 契約で定めた支払期日を迎えると、売掛先がファクタリング会社の指定口座へ代金を振り込む
2社間ファクタリングと異なり、利用者が売掛金を一時的に預かって引き渡す手間が発生しない点も、3社間ファクタリングの特徴です。
3社間ファクタリングの主な活用シーン
3社間ファクタリングは、資金調達を急いでおらず、コストを重視したい場面で幅広く活用されています。代表的な活用シーンは次のとおりです。
- 建設業:元請けが官公庁や大手ゼネコンで、支払いサイトが長い工事代金を低コストで現金化したい場合
- 製造業・卸売業:大手取引先向けの売掛金をまとめて現金化し、原材料の仕入れ資金に充てたい場合
- 大口の売掛債権を保有しており、手数料率のわずかな差が金額に大きく影響する場合
- 官公庁や大企業など、支払い能力が高く信用力のある売掛先の債権を現金化したい場合
- 決算期に向けて計画的に資金繰りを改善したい場合
- 銀行融資の審査に不安があるものの、時間的な余裕はある場合
「今すぐではないが、なるべく安いコストで資金を確保したい」というニーズに合致する場面で選ばれることが多い資金調達方法です。
銀行融資など他の資金調達方法との違い
3社間ファクタリングは、銀行融資と同じく審査に一定の時間がかかりますが、その性質は大きく異なります。
| 資金調達方法 | スピード | 審査基準 | 負債への影響 |
|---|---|---|---|
| 3社間ファクタリング | 数日〜数週間 | 売掛先の信用力を重視 | 負債は増えない(売却取引) |
| 2社間ファクタリング | 最短即日 | 売掛先の信用力を重視 | 負債は増えない(売却取引) |
| 銀行融資 | 数週間〜数ヶ月 | 自社の財務状況・信用力を重視 | 負債が増える |
銀行融資は「借りる」取引であるため、貸借対照表上の負債が増加し、利息負担も発生します。これに対して3社間ファクタリングは、あくまで売掛金という資産の売却であるため、負債を増やさずに資金化できる点が異なります。銀行融資の審査に不安がある企業でも、信用力の高い売掛先の債権があれば、3社間ファクタリングによって低コストで資金を確保できる可能性があります。
3社間ファクタリングのメリット
手数料を大幅に抑えられる
3社間ファクタリングの手数料相場はおおむね1〜9%程度とされ、2社間ファクタリングの相場より大きく低い水準です。ファクタリング会社は売掛先に直接連絡を取り、請求内容や支払い能力をその場で確かめられるため、「回収できるかどうか分からない」という不安を抱えずに買取価格を提示できます。この安心材料があるからこそ、手数料を低めに設定できるのです。たとえば額面300万円の売掛金であれば、手数料率が5%違うだけで受取額に15万円もの差が生じるため、売掛債権の額が大きいほど3社間ファクタリングを選ぶメリットは大きくなります。
ファクタリング会社のリスクが下がる仕組み
2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社は売掛先に直接連絡を取れないため、同じ売掛金が別の会社にも重ねて売却されていないか、実際には存在しない請求書が持ち込まれていないかを、提出書類だけで見極めなければなりません。一方、3社間ファクタリングでは売掛先に直接連絡が取れるため、こうした心配をする必要がありません。その安心感が価格に反映され、利用者が支払う手数料も自然と下がっていく仕組みです。
未回収リスクを負わずに済む
3社間ファクタリングも、多くは償還請求権のないノンリコース契約です。売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われる仕組みのため、利用者が売掛金の回収業務を担う必要がなく、代金の返還義務が生じることもありません。回収に関する事務負担や貸し倒れリスクを、実質的にファクタリング会社側へ移すことができます。
売掛先との信頼関係の証明にもなる
3社間ファクタリングを利用するには、売掛先の承諾が欠かせません。裏を返せば、売掛先の理解と協力を得られる関係性がある証拠ともいえます。ファクタリングの利用を隠す必要がないため、資金調達の事実をオープンにしたうえで、今後も良好な取引を続けたい相手との関係において選ばれやすい方法です。
個人事業主でも利用しやすい
2社間ファクタリングでは債権譲渡登記を求められ、法人でなければ契約できないケースがありますが、3社間ファクタリングは売掛先の承諾という形で債権の所在が明確になるため、登記を必須としない会社が多く、個人事業主やフリーランスでも利用しやすい傾向があります。
売掛先への上手な説明の仕方
3社間ファクタリングの成否は、売掛先にどう説明し、納得してもらえるかにかかっています。伝え方次第で、承諾を得られるかどうかや、その後の取引関係が大きく変わることもあるため、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 資金繰りの悪化が理由ではなく、財務戦略や事業拡大に向けた前向きな資金活用であることを伝える
- 支払い方法・支払い期日など、売掛先側の実務にはほとんど変更がないことを具体的に説明する
- ファクタリング会社の担当者に同席してもらい、第三者の立場から制度を説明してもらう
- 電話やメールだけで済ませず、可能であれば対面で丁寧に説明する機会を設ける
誠実に事情を説明すれば、多くの売掛先は資金調達の一手段として理解を示してくれるケースが少なくありません。日頃からの信頼関係が、承諾を得られるかどうかを大きく左右します。
資金調達できる金額の上限が大きくなりやすい
ファクタリング会社にとって未回収リスクの低い3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングに比べて買取可能額の上限が高く設定されている、あるいは上限が設けられていないケースも見られます。大口の売掛債権を保有する企業や、まとまった資金を一度に調達したい場面でも対応してもらいやすい点はメリットです。
3社間ファクタリングのデメリット・注意点
売掛先の承諾を得る手間と心理的ハードルがある
3社間ファクタリングを利用するには、売掛先にファクタリングの利用を説明し、承諾を得るプロセスが欠かせません。売掛先によっては、資金繰りに不安があるのではと懸念されたり、支払い先の口座変更に伴う社内手続きを面倒に感じられたりすることもあり、交渉に時間や気を遣う場面が出てきます。
資金調達までに時間がかかる
売掛先への通知・承諾のプロセスが挟まる分、2社間ファクタリングのような最短即日での資金化は難しく、契約完了までに数日から数週間程度かかることが一般的です。売掛先が承諾するかどうかの返答を待つ期間や、社内稟議に時間がかかる場合はさらに長引くこともあり、明日の支払いに間に合わせたいといった急な資金ニーズには対応しにくい点に注意が必要です。資金繰りに余裕がある段階で早めに動き出すことが、3社間ファクタリングをスムーズに活用するコツといえます。
売掛先との関係に影響するおそれがある
ファクタリングの利用を知られることで、売掛先から資金繰りを懸念されたり、今後の取引条件に影響が出たりする可能性はゼロではありません。特に、取引を始めて日が浅い相手や、支払い条件について厳格な社内規定を持つ大企業・官公庁が売掛先の場合は、社内稟議や部署間の調整に時間がかかり、想定より手間取ることもあります。長年の取引実績があり、事情を説明すれば理解が得られる相手かどうかを見極めたうえで選ぶことが大切です。
債権譲渡登記を求められる場合がある
3社間ファクタリングでは売掛先の承諾によって債権の所在が明確になるため、債権譲渡登記は不要とする会社が多いものの、会社によっては念のため登記を求められることもあります。登記は法人のみが利用できる制度であるため、個人事業主が利用する場合は、登記の要否を事前に確認しておくと安心です。
3社間ファクタリングに違法性はないのか
3社間ファクタリングは、売掛先を交えて公然と行われる取引であるため、2社間ファクタリング以上に違法性を疑われることは少ない資金調達方法です。売掛金(債権)の売買契約であり、貸金業には該当しません。
民法第466条第1項では、債権は原則として自由に譲渡できると定められており、売掛先の承諾を得たうえで行う3社間ファクタリングは、この債権譲渡の枠組みに沿った取引です。万一、売掛先が支払期日に支払いを行わなかった場合でも、償還請求権のない契約であれば、利用者が代金を弁済する義務は発生しません。この点からも、実質的な金銭の貸し借り(融資)とは異なる、適法な債権売買であることが分かります。
3社間ファクタリングの利用が向いているケース
手数料をできるだけ抑えたいとき
資金調達を急いでおらず、コストを最優先したい場合は、手数料相場が低い3社間ファクタリングが適しています。特に売掛金の額が大きい場合は、手数料差によるコストメリットも大きくなります。
売掛先の理解・協力が得られるとき
何年も取引を続けてきた相手や、「資金繰りの事情を話しても嫌な顔をされない」と分かっている売掛先が相手であれば、通知や承諾を切り出すハードルは大きく下がります。こうした関係性がすでに築けている場合は、3社間ファクタリングを選択肢に入れやすくなるでしょう。
資金調達を急いでいないとき
決算対策や将来の投資に向けた計画的な資金確保など、入金までにある程度の時間的余裕がある場面では、スピードよりもコストを優先した3社間ファクタリングが向いています。
3社間ファクタリング会社を選ぶポイント
3社間ファクタリングは、契約するファクタリング会社によって手数料や対応の丁寧さ、売掛先とのやり取りへのサポート体制が大きく異なります。会社選びで失敗しないために、以下のポイントを確認しましょう。
手数料の相場と算定基準を確認する
3社間ファクタリングの手数料は、売掛先の信用力や取引実績によって変動します。提示された手数料率だけでなく、事務手数料など追加費用の有無も含めて、複数社から見積もりを取って比較しましょう。
売掛先への説明・案内をサポートしてくれるか確認する
売掛先への通知・承諾の取得は、ファクタリング利用の中でも特に気を遣う場面です。説明資料の用意や、売掛先からの質問への対応をサポートしてくれる会社を選ぶと、スムーズに手続きを進めやすくなります。
契約書で確認すべきチェックリスト
- 手数料率と、手数料以外に発生する費用(事務手数料・振込手数料など)の有無
- 償還請求権(買戻し特約)の有無
- 売掛先への通知方法(書面・郵送・訪問など)と、対応してくれる範囲
- 審査から入金までの想定スケジュール
複数社の相見積もりを取ることの重要性
同じ売掛金であっても、依頼するファクタリング会社によって提示される手数料や対応スピードは異なります。1社だけの提案を鵜呑みにせず、2〜3社程度から相見積もりを取ることで、相場観をつかみながら自社にとって有利な条件の会社を見極めやすくなります。
3社間ファクタリングを利用する流れ
申込みから売掛先への通知・承諾までの流れ
申込み時には、売掛金の内容を示す請求書や発注書・契約書の写しに加え、直近数ヶ月分の入出金が確認できる通帳の写し、直近1〜2期分の決算書・確定申告書の提出を求められるのが一般的です。法人であれば商業登記簿謄本、個人事業主であれば本人確認書類も併せて準備しておくと手続きがスムーズに進みます。
書類を提出すると、売掛先の信用力を含めた審査が行われます。審査通過後、ファクタリング会社と協力しながら売掛先へファクタリング利用の通知を行い、承諾を得るための説明を行います。
契約・入金・売掛金回収までの流れ
売掛先の承諾が得られたら、ファクタリング会社と契約を締結します。契約後は手数料を差し引いた金額が口座へ入金され、売掛金の支払期日には売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われて取引は完了します。
3社間ファクタリングでよくあるトラブルと対処法
3社間ファクタリングは比較的トラブルの少ない資金調達方法ですが、次のような点でつまずくケースが見られます。あらかじめ押さえておくことで、スムーズに手続きを進められます。
- 売掛先への説明が不十分で、承諾を得るまでに想定以上の時間がかかってしまう→事前に説明資料を用意し、ファクタリング会社の担当者にも同席してもらう
- 売掛先の支払い口座の変更手続きが漏れてしまい、支払期日に入金が滞る→契約締結後、速やかに売掛先の経理担当者と変更手続きを確認する
- 手数料や契約条件を1社の提示だけで決めてしまい、後から他社の方が有利だったと気づく→契約前に複数社から相見積もりを取る
いずれも、事前の準備とファクタリング会社との丁寧なコミュニケーションによって防げるトラブルです。
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よくある質問(FAQ)
Q. 3社間ファクタリングと2社間ファクタリング、どちらを選ぶべきですか?
A. 手数料の安さを優先するなら3社間、スピードや売掛先に知られたくないという事情を優先するなら2社間が向いています。資金調達の目的や緊急度に応じて選びましょう。
Q. 売掛先が承諾してくれない場合はどうなりますか?
A. 売掛先の承諾が得られなければ、3社間ファクタリングを利用することはできません。その場合は、通知不要の2社間ファクタリングを検討するとよいでしょう。
Q. 3社間ファクタリングは個人事業主でも利用できますか?
A. 多くのファクタリング会社が個人事業主にも対応しています。ただし売掛先の承諾が前提となるため、事前に対応可否を確認しましょう。
Q. 売掛先にファクタリングの利用がバレるとどうなりますか?
A. 3社間ファクタリングはそもそも売掛先の承諾を前提とする取引のため、「バレる」という感覚ではなく、事前に説明・合意したうえで進めます。誠実に事情を説明すれば、多くの場合は資金調達の一手段として理解を得られます。
Q. 3社間ファクタリングの手数料はどのくらいが目安ですか?
A. 会社や売掛先の信用力によって幅がありますが、2社間ファクタリングより低めに設定されるのが一般的です。手数料の算定基準は会社ごとに異なるため、複数社から見積もりを取り比較することをおすすめします。
Q. 売掛先が倒産して支払いが行われなかった場合はどうなりますか?
A. 償還請求権のないノンリコース契約であれば、利用者が代金を返還する必要はありません。契約内容によって扱いが異なるため、契約前に必ず確認しましょう。
Q. 3社間ファクタリングを利用した場合、消費税はかかりますか?
A. 売掛金(金銭債権)の譲渡は消費税法上の非課税取引にあたるため、手数料部分を含めて消費税は課税されません。経理処理上は適切な仕訳が必要になるため、不明な場合は顧問税理士に確認することをおすすめします。
Q. 何社くらいから見積もりを取ればよいですか?
A. 2〜3社程度から相見積もりを取ると、相場観をつかみやすくなります。手数料率だけでなく、売掛先への説明サポートの有無や担当者の対応も合わせて比較すると、契約後のミスマッチを防ぎやすくなります。
まとめ
3社間ファクタリングは、売掛先を交えて契約することで、2社間ファクタリングよりも低い手数料で資金調達できる方法です。売掛先の承諾を得る手間や時間はかかるものの、未回収リスクを抑えられ、個人事業主でも利用しやすいというメリットがあります。
一方で、手数料の水準や買取可能額の上限は会社によって大きく異なるため、契約前には見積もりを複数社から取り、契約書の内容を細部まで確認することが欠かせません。売掛先への説明さえ丁寧に行えれば、銀行融資に頼らずに低コストで資金を確保できる、中小企業にとって心強い選択肢です。資金調達の緊急度とコストのバランスを踏まえ、2社間ファクタリングと使い分けながら、無理のない資金繰り改善につなげていきましょう。

