近年では情報技術の発展、DX化などによって社会全体がめまぐるしく変化しており、企業を取り巻く状況も大きく変わり続けています。資金調達の方法も、昔ながらの銀行融資や手形などの方法から「より迅速」で「簡易」なものが求められる時代となっています。
ファクタリング(債権譲渡/先払い/請求書買取)はこういった状況の中で可能性を秘めた資金調達方法の一つです。近年では債権流動化(債権譲渡)を円滑にするため、民法の改正によって債権譲渡に関する法的ルールも変更されました。政府としても「債権法改正により資金調達が円滑になる」と示しており、ファクタリング取引を促すような改正を行っております。
また旧来の代表的な資金繰りの手段であった約束手形を廃止すべきという議論も起こっています。
今回は、世の中がどのように動いているかの共通理解のために、2020年の民法改正によって債権譲渡にどういった変更(ファクタリング促進)があったのか、約束手形がなぜ廃止されようとしているのか、今後のファクタリングの市場展望をふまえて解説します。
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2020年4月1日の民法改正により債権譲渡(ファクタリング)が円滑に
2020年4月1日、改正民法が施行されました。
旧来の民法は明治時代に策定されたものであり、現代の感覚や常識に適合しない部分が多くなっていたため、約120年ぶりに大幅な見直しが行われたのです。
今回の改正では「債権譲渡(ファクタリング)」に関する規定も大きく変更されました。企業の資金調達と債権譲渡(ファクタリング)は密接に関係します。以下では債権譲渡における民法の改正内容についてお伝えします。
債権譲渡と資金調達の関係
債権譲渡(ファクタリング)を円滑に行える環境になると、企業が資金調達しやすくなります。どのような企業であっても、取引先への「債権」を有しているものだからです。
債権譲渡(ファクタリング)をスムーズに行えると、企業は自社が取引先へ取得している債権を他社へ譲渡しやすくなります。売買代金を受け取ったら運転資金などに使えるので、債権の弁済期の到来前に資金調達が可能となります。企業が“債権流動化という選択肢を持つ”ことになり、企業の選択肢の広がりを意味します。
この選択肢である、債権売買による資金調達が、いわゆる「ファクタリング」と呼ばれているものです。他には請求書買取、先払いとも言われてます。
債権譲渡が円滑化されると各企業がファクタリングによる資金調達を利用しやすくなる、といった関係にあります。
債権譲渡における民法の改正内容
2020年4月の民法改正では債権譲渡を円滑化すべく、条文に大きな変更がありました。
以下で変更点をご説明します。
譲渡禁止特約がついていても債権譲渡は有効に
債権には「譲渡禁止特約」がつけられているケースが多々あります。譲渡禁止特約とは「第三者へ債権を譲渡してはならない」とする債権者と債務者との間の取り決めです。ただ、現実には譲渡禁止特約がついていても違反して、債権者が債権譲渡してしまうケースも少なくありません。
このように、譲渡禁止特約がつけられている場合の債権譲渡契約の有効性につき、根本的な変更が行われました。
従来の民法
従来の民法では、譲渡禁止特約がついていると債権譲渡は「無効」と規定されていました。
ただし「譲渡禁止特約について善意無重過失の譲受人に対しては、譲渡禁止特約を主張できない」とすることで、無関係な第三者を保護していました。なお善意無重過失とは、譲渡禁止特約を知らず、そのことについて著しい不注意がない、という意味です。
旧民法の規定方法によると「譲渡禁止特約つきの債権譲渡は基本的に無効」なので、譲受人の善意無重過失については譲受人が立証しなければなりません。
改正民法
改正民法では、譲渡禁止特約がついていても債権譲渡は「有効」になります。
ただし「譲渡禁止特約について悪意重過失の譲受人に対しては支払いを拒否できる」と規定されました。
改正民法では「譲渡禁止特約つきの債権譲渡は基本的に有効」なので、譲受人の悪意重過失については債務者側が立証責任を負います。つまり債権譲渡の当事者には立証責任がかかりません。
その結果、中小企業が資金調達を行いたいときにも安心して債権を譲渡できるようになると期待されています。この民法改正でファクタリング業者も譲渡禁止特約の有無の確認を必要とせずともファクタリング取引を行うことが出来るようになりました。
将来債権の譲渡について
改正民法では、将来債権を譲渡できることも明確に定められました。
将来債権とは、契約時に発生しておらず将来発生すると予定される債権です。
企業が資金調達を行う場合、「まだ工事に着工していないので債権が未発生だが、確実に発生するのでファクタリングに利用したい」と考える場合もあるでしょう。
そんなときでも改正民法下では将来債権の譲渡が認められるので、ファクタリング対象となる債権(請求書)が増え、ファクタリングによる資金調達の可能性が広がりました。
債務者の利益も守られるように
譲渡禁止特約つきの債権譲渡も基本的に有効にはなりますが、債務者の利益が完全に無視されるわけではありません。
上記のとおり、悪意重過失の譲受人に対しては支払いを拒否できます(ただし悪意重過失の立証をしなければなりません)し、他にも以下のような保護規定があります。
異議をとどめない承諾規定の廃止
改正民法では「異議をとどめない承諾」の規定が廃止されました。
異議をとどめない承諾とは「債務者が債権譲渡に対して特段の異議をとどめずに承諾した場合、譲渡禁止特約などの抗弁事由があっても主張できなくなる」というルールです。
譲渡禁止特約や取消原因などがあっても「異議をとどめずに承諾した」とみなされたら主張できず、債務を弁済しなければならない状況に陥ります。
改正民法では、債務者が抗弁を失うには債務者が明確に抗弁権を放棄する必要がある、と規定されました。
相殺の取り扱いが明確に
債務者が相殺の抗弁を主張できる場合についても明確になりました。
旧民法では、債務者がいつの時点で取得した債権を相殺に用いられるのか、不明だったのです。
改正民法では以下のような債権は相殺に用いられると定められました。
- 債権譲渡による対抗要件具備前に取得した債権
- 債権譲渡による対抗要件具備前の原因によって取得した債権
- 将来債権が譲渡された場合、もととなった契約にもとづいて発生した債権
つまり「対抗要件具備前に取得、あるいは対抗要件具備前の事情によって取得した債権」なら問題なく相殺の主張ができます。
改正民法の適用時期
改正民法が適用されるのは、施行日である2020年4月1日以降に債権譲渡(ファクタリング)を行ったケースです。施行日前に債権譲渡した場合、「譲渡禁止特約つきの債権譲渡は原則無効」とする旧民法が適用されます。たとえば将来債権を譲渡する場合で譲渡債権の発生日が2020年5月1日であっても、債権譲渡契約の締結日が2020年3月1日であれば適用されるのは旧民法です。
ファクタリング取引の場合「ファクタリング会社との契約日が2020年4月1日以後であれば改正民法が適用される」と考えてよい、と解釈しています。
国も改正民法による債権譲渡による資金調達を後押し/ファクタリング取引の推進
国も改正民法による中小企業の債権流動化による資金調達を推進しています。
経済産業省が発表した資料には、以下のような記載があります。
民法改正によって企業が受けるメリット
「債権譲渡(ファクタリング取引)」は中小企業の資金調達のために行われるケースがよくあります。
しかし改正前の民法では、債権者と債務者との間の契約に「譲渡制限特約」を付すと債権譲渡を無効にできたため、債権者(中小企業等)の円滑な資金調達を妨げているという声がありました。今回の改正は、このような実情に対応したものです。
改正により企業の皆様にとっては、債権を活用した資金調達(ファクタリング取引)が行いやすくなるメリットがありました。
譲渡禁止特約つきの債権を譲渡しても契約を解除、損害賠償されない
改正民法下では譲渡制限特約つきの債権譲渡が有効となりますが「特約に違反すると取引先から契約を解除されたり損害賠償されたりするのでは?」と懸念する声もあります。
この問題については、法務省が「解除や損害賠償の理由にならない」という見解を発表しています。
改正民法においても債務者の利益は守られているので、「資金調達目的での債権譲渡については、契約の解除や損害賠償の原因とはならない」「譲渡されても特段の不利益がないにもかかわらず、取引の打切りや解除を行うことは合理性に乏しく、権利濫用等に当たり得る」と解釈されているのです。
国からの呼びかけ
以上を前提に国は各企業へ以下のような呼びかけを行い、円滑な債権譲渡(ファクタリング取引)を促しています。
- 譲渡制限特約が付された債権を資金調達目的で譲渡しても、契約の解除・取引停止・損害賠償の原因とはならないと考えられるため、下請事業者に対し不当に契約の解除・取引停止、損害賠償請求等を行わないようにすべき
- 譲渡禁止特約をつけるとしても、金融機関等に対する資金調達目的での債権譲渡は禁止しない内容にすべき
国も債権譲渡による企業の資金調達に期待していることが明らかといえるでしょう。法改正の影響もあり、今後はますますファクタリングを使った資金調達が活発化してくると予想されます。
【参照先】
債権法改正により資金調達が円滑になります
債権譲渡に関する民法改正の主なポイント
手形廃止議論の状況と廃止された場合の影響を分析
次に現在議論されている「約束手形廃止」の展望についてお伝えします。債権の流動化(円滑なファクタリング取引)とは違った切り口が議論されています。
従来、企業の資金調達や資金繰りの手法として約束手形が広く用いられていました。しかし近い将来に現行の手形取引が廃止される可能性があります。
約束手形とは、振出人が受取人に対して手形に記載された金額を期日に支払う約束をする証紙です。期日が来たら、振出人は約束手形の持主へ手形記載金額を払わねばなりません。
約束手形は譲渡(手形の譲渡を裏書きといいます)できるので流通させやすいメリットもあり、広く普及していました。
ところが近年では時代の要請にそぐわなくなり、約束手形を利用する企業がどんどん減少しています。
約束手形の問題点
紙である
約束手形は紙の証紙です。裏書きの際には署名押印しなければなりません。
現代取引社会でDX化がどんどん進められている状況において、紙、署名押印を要するなどの約束手形の要素は時代に逆行するものといえます。管理の手間、紛失や変造などのリスクもあり、印刷費や郵送費などのコストもかかります。電子化が加速度的に進む現代社会において、簡易迅速に資金調達するには不向きです。
支払いサイクルが長すぎる
約束手形は支払いサイクルが非常に長くなっています。支払期日までの期間は約100日に設定されているケースが多く、2~3か月にもなります。政府も検討会において「その間の利息や割引料が支払われていない取引慣行と併せると、取引先企業に資金繰りを負担させる弊害の伴う支払手段」と指摘しています。
割引料の負担
手形を受け取る際の割引料の負担も問題視されています。
金融機関が負担せず割引料を受取人の負担とされるケースが多いので、手形を利用するとコストがかかる状況だからです。
銀行が交付する統一用紙しか使えない
一般に流通する約束手形は銀行の専用約束手形用紙を使ったものです。一般の人や企業が勝手に約束手形を作成しても、信用性が認められずほぼ使えません。いちいち銀行から紙の専用約束手形用紙をもらって運用するのも手間となるでしょう。
約束手形の流通量
経済産業省の検討会報告書によると、2019年における約束手形の残高は約25兆円です。
1990年のピーク時には約107兆円だったので、4分の1以下に低下しているといえます。
政府の検討会資料によると「受取人の9割、振出人の7割超が「やめたい」意向を示しているとも報告されています。「悪しき商慣習」ととらえる企業も増加しています。
政府が約束手形の廃止を検討
こうした約束手形の問題点を受けて、政府は約束手形の取り扱いを改定しようとしています。
- 手形の支払いサイトを業種に関わらず60日以内とする
- 手形割引料の本体価格分と割引料相当額を明示する
- 施行時期は3年を目処
上記の改定にとどまらず「約束手形の利用を廃止していくべき」「現金決済や電子記録債権などの別の手段への切り替えを進めるべき」とも報告されています。
今後、江戸時代から長らく続いてきた手形が全廃される日が訪れるかもしれません。
手形廃止にともなう課題
約束手形を廃止するといっても、長く続いてきた商慣習をいきなりなくすのは簡単ではありません。以下で手形廃止にともなう課題を示します。
業界、社会全体が意識を共有する
ある会社が「約束手形を使いたくない」と考えても、業界内では手形取引が常識であれば、自社のみ使わないわけにはいきません。手形がサプライチェーンに組み込まれている場合には、サプライチェーン全体の見直しが必要となるでしょう。
手形を廃止するには業界全体、社会全体が「手形から脱却する」意識を共有しなければなりません。
他の決済手段の利便性を向上させる
手形をなくす場合、代わりの決済手段が必要です。
政府からは「銀行振込」や「電子記録債権」の利用が推奨されており、特に電子記録債権は手形に代わる手法とされます。
しかし現在の電子記録債権の口座には互換性がなく、利用する場合には受け取り側も同じ電子記録債権機関で口座を持たねばなりません。サービスに高額な手数料がかかるのも難点です。
多くの企業は電子記録債権の利用に積極的ではありませんし、そもそも電子記録債権を知らない企業もあります。
手形を廃止するには他の決済手段の利便性を高める必要があるでしょう。
他の資金調達手段の確保
約束手形には資金調達手段としての重要な役割があります。
多くの企業が約束手形を資金繰りに利用しているため、不便ではあっても急にはやめられないのです。約束手形を廃止するなら、企業の資金調達方法を確保しなければなりません。
政府は日本政策金融公庫の低利融資制度などを提言していますが、それだけでは不足するでしょう。
他の資金調達手段として、手形取引との代替となる一番の選択肢はファクタリング(債権譲渡)取引です。
どのような小さな企業でも取引先への債権はもっており、会社の規模や業種にかかわらず利用できます。個人事業主であっても債権さえあればファクタリングで資金調達できます。銀行融資のように審査に時間もかからず、申し込みをすれば即日~数日で資金調達が可能です。
そのため、近年の民法改正による債権譲渡に関する規定の整備も、中小企業へファクタリング(債権譲渡)による資金調達を選択肢として確保する趣旨です。
少なくとも資金調達の面については、ファクタリング会社が約束手形の代替手段としての役割を果たせる可能性が高いです。
【参照】
約束手形とは【経産省が2026年にも廃止方針】資金繰りへの影響を解説
約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会報告書
ファクタリング業界の展望
最後に、今後のファクタリング業界はどのように変わっていくのか、展望を述べます。
現在の日本におけるファクタリングマーケット規模
FCI(Factors Chain international)によると、2019年における日本でのファクタリング取引額は約500億ユーロです。FCIは世界規模のファクタリングネットワークを構築する団体であり、世界90か国以上、400社以上の企業が加盟しています。
ファクタリング取引額のもっとも多いのは中国の4035億ユーロ、次いでフランスの3497億ユーロ、イギリスの3289億ユーロなどとなっており、日本とは桁が1つ違います。
日本におけるファクタリング市場はまだまだ発展途上といえるでしょう。
日本におけるファクタリングの課題
政府も債権譲渡による資金調達を推進しており約束手形廃止議論が発生するなど、今後はファクタリングが活発化してくることは間違いないと予想されます。
ただしファクタリングが伸びていくには課題もあります。
マイナスイメージの払拭
1つは債権譲渡による資金調達にあまり良いイメージがない問題です。
「債権譲渡してまで資金調達しなければならない」場合、日本では「資金繰りが悪化している」「経営状況が不安である」とみなされてしまい、取引先の信用を失うリスクが懸念されます。多くの企業がファクタリングを利用するときに取引先に秘密にする「2社間ファクタリング」を選択するのもこうした事情によります。
ヨーロッパ諸国のように広く社会へファクタリングを普及させるには、悪いイメージを払拭する必要があるでしょう。
サービス事業者の質の向上
ファクタリングのサービスが認知されてきたのが最近であるため、日本ではサービス事業者の質もまちまちです。なかには違法な給与ファクタリングを行って逮捕される事業者もあり、世間に誤解を与えてしまう可能性もあります。
しかしファクタリングは正しく使えば非常に優秀でクリーンな資金調達の選択肢です。
良質なファクタリングサービスを利用すれば、安全かつ迅速に資金調達ができて企業の運転資金を確保できます。
ファクタリングをより広く普及させるには、サービス事業者の質を底上げする必要があるでしょう。またあくまで選択肢の1つであり、この点を利用者も理解した上で、他の資金調達との比較検討をしたうえで利用する必要があります。
(弊社としては、「ブリッジファイナンスとしてのファクタリング活用」が合理的と考えています)
ファクタリングの将来
日本はファクタリングの普及に関して世界に遅れをとっている状況です。
未だに約束手形から脱却できないようでは取り残されるので、国としても法改正も行って債権譲渡による資金調達を推進しようとしています。
今後ファクタリングが普及するにつれて悪質なファクタリング事業者は淘汰され、運営方法もクリーンになっていくでしょう。社会内でのマイナスイメージもいずれ払拭されていくと考えられます。
ヨーロッパでは人口が日本より少ない国でも日本の数倍のファクタリング取引が行われています(ファクタリング取引量2位のフランスの人口は約6540万人、日本は約1億2千万人)。このことからすると、日本でファクタリングが普及すれば現在の10倍以上の取引量となる可能性も十分にあるといえるでしょう。
【参照】
Factors Chain international
まとめ
今回も長文になりましたが、要旨を纏めると下記の通りです。
- 国として債権譲渡(ファクタリング)を選択肢の1つとして使いやすくするために、民法の改正を実施
- 手形取引量自体が減少傾向にあり、中小企業にとり他の資金調達方法への置換が起こっている
- ファクタリング取引自体は今後も増える見込み