買掛金の支払期日が迫っているが、手元資金が足りない――そんな資金繰りの悩みを抱える発注企業に注目されているのがリバースファクタリングです。本記事では、リバースファクタリングの仕組みや通常のファクタリングとの違い、発注企業・外注先それぞれのメリット・デメリット、利用の流れまでわかりやすく解説します。
リバースファクタリングとは?基本を解説
リバースファクタリングとは、発注企業(買掛金を抱える企業)が外注先企業(下請け企業)への支払いをファクタリング会社に一時的に立て替えてもらい、後日ファクタリング会社に返済するサービスです。
通常のファクタリングは「売掛金を持つ外注先企業」が資金調達のために利用しますが、リバースファクタリングはその逆で「買掛金を持つ発注企業」がサービスを利用します。「リバース(逆)」という名称はここに由来します。
リバースファクタリングを活用すると、発注企業は買掛金の支払期日を先延ばしにできるため、キャッシュフローの改善・資金繰りの安定につながります。一方で、外注先企業はファクタリング会社から早期に売掛金を回収できるため、双方にメリットがある仕組みです。
ファクタリングとの違い
リバースファクタリングと通常のファクタリングの最大の違いは「サービスを利用する主体」です。通常のファクタリングは、売掛金を持つ外注先企業が主体となって売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に現金化します。一方、リバースファクタリングは、買掛金を抱える発注企業が主体となって、ファクタリング会社に買掛金の立て替え払いを依頼します。
契約形態も異なります。通常のファクタリングは「債権譲渡契約」を結びますが、リバースファクタリングは事実上の融資に近いため「融資契約」が締結されるのが一般的です。また、通常ファクタリングには2社間・3社間がありますが、リバースファクタリングは外注先企業の同意が必須であるため、常に3社間での契約となります。
リバースファクタリングが注目される背景
近年、資金調達手段の多様化とともにリバースファクタリングへの注目が高まっています。特に中小企業や外注先企業との取引が多い企業の間では、取引規制への対応やサプライチェーン全体の安定を目的として導入が進んでいます。
この流れを加速させたのが、2026年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法(取適法)」です。取適法は旧来の下請法を大幅に改正したもので、主な変更点は以下の通りです。
- 法律名・用語の変更:「親事業者」→「委託事業者」、「下請事業者」→「中小受託事業者」に変更
- 適用対象の拡大:資本金基準に加え従業員数基準(製造委託等は300人超、役務提供委託等は100人超)が追加。資本金が小さくても従業員規模の大きい企業も対象に
- 手形払いの全面禁止:約束手形による支払いが一律禁止。なお、でんさい(電子記録債権)やファクタリングも、支払期日までに満額の現金を得ることが困難なものは同様に禁止
- 一方的な代金決定の禁止:価格協議の求めに応じず一方的に代金を決定することが禁止
取適法においても、委託事業者(発注企業)は中小受託事業者(外注先企業)への支払いを給付受領日から60日以内に行う義務は継続されています。リバースファクタリングを活用することで、外注先への支払いを期日通りに行いながら、発注企業自身は余裕のある期日でファクタリング会社に返済でき、法令遵守と資金繰り改善を両立できます。適用対象が拡大された取適法により、これまで規制の対象外だった企業もリバースファクタリングを活用した法令対応を検討するケースが増えています。
リバースファクタリングの仕組み
リバースファクタリングには、発注企業・外注先企業・ファクタリング会社の3社が関わります。基本的な仕組みは「発注企業の代わりにファクタリング会社が外注先へ支払いを行い、後日発注企業がファクタリング会社に手数料を含めて返済する」というものです。
この仕組みにより、外注先企業は本来の支払期日より早く代金を受け取ることができ、発注企業は支払期日を実質的に先延ばしにすることが可能になります。
3社間で行われる取引の流れ
まず外注先企業が商品やサービスを納品し、発注企業が請求書を受け取ることでリバースファクタリングの利用が始まります。発注企業はファクタリング会社に申込みを行い、自社の支払能力などについて審査を受けます。審査を通過したのち、発注企業・外注先企業・ファクタリング会社の3社で契約を締結します。契約後はファクタリング会社が外注先企業へ買掛金(手数料差引後)を代わりに支払い、最終的に発注企業がファクタリング会社へ手数料を含めた金額を返済して取引が完了します。
なお、利用開始にあたっては取り扱い可能な買掛金の金額・立て替え期日・手数料・支払期間などを事前に取り決める必要があります。ファクタリング会社によって条件は異なるため、複数社を比較検討することをおすすめします。
電子記録債権(でんさい)との関係
リバースファクタリングを利用するには、原則として電子記録債権(でんさい)の導入が必要です。でんさいとは、従来の約束手形や振込に代わる電子的な決済手段で、債権の発行・譲渡・現金化をすべてインターネット上で完結できます。
でんさいのメリットは、紙の手形と異なり紛失・盗難のリスクがなく、事務コストも削減できる点です。さらに二重譲渡を防ぐ仕組みもあり、安全性が高い決済手段です。ただし、全国銀行協会の審査を通過する必要があり、小規模事業者には導入ハードルが高いことも事実です。
通常のファクタリングとの違い一覧
| 項目 | リバースファクタリング | 通常のファクタリング |
|---|---|---|
| 利用主体 | 発注企業(買掛金保有者) | 外注先企業(売掛金保有者) |
| 対象債権 | 買掛金(買掛債務) | 売掛金(売掛債権) |
| 利用目的 | 支払期日の先延ばし・資金繰り改善 | 早期資金調達 |
| 審査対象 | 発注企業(利用主体) | 発注企業(利用主体ではない) |
| 契約形態 | 3社間のみ | 2社間または3社間 |
| 手数料負担 | 主に外注先企業 | 外注先企業 |
リバースファクタリング最大の特徴は、「支払う側(発注企業)」がサービスを主導する点です。買掛金を対象にするため、売却できる売掛金がない場合でも利用できます。
発注企業から見たメリット
リバースファクタリングを利用することで、発注企業は複数の恩恵を受けることができます。以下では主要なメリットを解説します。
買掛金の支払期日を延ばせる
リバースファクタリング最大のメリットは、買掛金の支払期日を実質的に先延ばしにできることです。取引先(外注先企業)への支払いはファクタリング会社が代行するため、発注企業は新たに設定した期日までにファクタリング会社へ返済すればよくなります。
企業の資金繰り改善の原則は「代金回収は早く、代金支払いは遅く」です。リバースファクタリングを活用することで手元資金に余裕が生まれ、運転資金や設備投資などに充てることができます。
支払い先の一本化でコスト削減
外注先企業が複数ある場合、それぞれへの支払い管理は煩雑になりがちです。リバースファクタリングを導入することで、すべての買掛金の支払いをファクタリング会社に一本化できます。
これにより、各社への個別振込に伴う振込手数料の削減はもちろん、支払管理にかかる人件費や事務処理コストも削減できます。
優秀な外注先企業との関係維持
取引先への支払いが遅延すると、信頼関係が損なわれ、将来的な外注が難しくなるリスクがあります。リバースファクタリングを活用すれば、ファクタリング会社が期日通りに外注先への支払いを代行するため、支払遅延の心配がありません。優秀な外注先企業を囲い込み、長期的に安定した取引関係を築くことができます。
外注先企業から見たメリット
リバースファクタリングのメリットは発注企業だけにとどまりません。外注先企業(下請け企業)にも以下のようなメリットがあります。
売掛金の早期回収
リバースファクタリングを活用することで、外注先企業はファクタリング会社から本来の支払期日より大幅に早く資金を回収できます。これにより外注先企業自身の資金繰りも改善し、新たな仕入れや人件費の支払いをスムーズに行えるようになります。
貸倒れリスクの回避
リバースファクタリングでは代金の支払いをファクタリング会社が行うため、外注先企業は発注企業の信用状況に左右されず、確実に代金を回収することができます。特に大口取引先への売掛金が多い外注先企業にとっては、貸倒れリスクの分散・軽減という観点でも有益なサービスです。
リバースファクタリングのデメリット・注意点
リバースファクタリングはメリットが多い一方、いくつかのデメリットや注意点もあります。導入前にしっかり把握しておきましょう。
手数料が発生する
リバースファクタリングを利用するには手数料が発生します。手数料はファクタリング会社・買掛金の金額・支払期日・発注企業の信用状況などによって異なります。手数料は外注先企業の受取金額から差し引かれる形となるため、事前に十分な説明と合意を得ることが重要です。
でんさい導入が必要
リバースファクタリングの利用には原則としてでんさいの導入が必要です。全国銀行協会の審査をクリアする必要があり、小規模事業者にとってはハードルが高いと言わざるを得ません。
審査対象が発注企業自身になる
リバースファクタリングは事実上の融資に近い性質を持つため、利用者である発注企業自身が審査対象になります。発注企業の財務状況が悪ければ審査に通らない可能性があります。
対応ファクタリング会社が少ない
リバースファクタリングに対応しているファクタリング会社はまだ多くありません。複数のファクタリング会社を比較検討し、自社の条件に合ったサービスを選ぶことが重要です。
リバースファクタリングの利用が向いているケース
- 買掛金の支払いサイトが短く、資金繰りに苦労している発注企業:売掛金の回収よりも先に買掛金の支払期日が来てしまう企業に有効です。
- 買掛金額が大きく、支払いが一時的に困難な企業:製造業・建設業・IT業など、仕入れや外注費が多い業種に特に効果的です。
- 下請法対応が必要な大企業・中堅企業:外注先への支払いを早め、60日ルールを遵守できます。
- 外注先企業の資金繰りをサポートしたい発注企業:サプライチェーン全体を強化したい企業にも有効です。
利用の流れ(申込から完了まで)
- でんさいの導入:取引銀行を通じて全国銀行協会の審査を受け、でんさいを導入します。
- ファクタリング会社への申込み:必要書類(財務諸表・請求書など)を提出して申込みを行います。
- 審査・契約:発注企業の財務状況・支払能力などを審査後、3社で契約を締結します。
- 外注先企業への支払い:ファクタリング会社が外注先企業に対して代金(手数料差引後)を支払います。
- 発注企業からの返済:発注企業がファクタリング会社に買掛金+手数料を返済して完了です。
よくある質問(FAQ)
Q. リバースファクタリングの手数料は誰が負担しますか?
A. 手数料は外注先企業が受け取る金額から差し引かれる形で負担する仕組みになっています。そのため、サービス導入前に外注先企業への説明と合意が必要です。
Q. 売掛金がない会社でもリバースファクタリングは利用できますか?
A. はい、利用できます。リバースファクタリングは買掛金を対象とするサービスのため、売掛金を持たない発注企業でも活用可能です。ただし、現金取引や手形取引の場合は利用できません。
Q. 2者間ファクタリングとしてリバースファクタリングを利用できますか?
A. いいえ、できません。リバースファクタリングは外注先企業の同意・関与が必須であるため、常に3社間での契約となります。
Q. 審査にはどれくらい時間がかかりますか?
A. ファクタリング会社によって異なりますが、一般的には数日〜1週間程度かかるケースが多いです。
まとめ
本記事では、リバースファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、通常のファクタリングとの違いについて解説しました。
リバースファクタリングは、買掛金の支払期日を先延ばしにして資金繰りを改善したい発注企業や、下請法への対応が必要な大企業・中堅企業に特に有効なサービスです。外注先企業も売掛金の早期回収・貸倒れリスク回避というメリットを得られるため、取引双方にとってメリットのある仕組みと言えます。
一方で、でんさいの導入が必要・手数料が発生する・審査が厳しいなどのデメリットもあります。「手数料を払ってでも支払期日を延ばす価値があるか」を慎重に判断した上で、自社に合ったファクタリング会社を選定しましょう。
また、2026年1月施行の取適法(中小受託取引適正化法)により、規制対象の拡大・手形払い禁止など実務への影響が生じています。自社の取引が適用対象かどうかを確認した上でリバースファクタリングの活用を検討することが重要です。

